

【生徒】 裁判官ってリストラされなくていいですよね。
【弁護士】 最近は不景気でリストラも多いですからね。でも、これは何も裁判官にとって嬉しいだけじゃなくて、我々国民の利益にも資していますよ。
【生徒】 どういうことですか?
【弁護士】 76条3項を覚えていますか?少数派の人たちの利益を守るために、裁判官の判断は外部から影響されないようにされているのでしたよね。それが建前になっていますが、例えば、行政機関に裁判官の身分を剥奪する権限があるとしたら、行政機関に優位な判断をしようと考えるおそれがあるでしょう?そんなことがあってはならないから、憲法は裁判官の独立を確実にするために、わざわざ身分保障の規定を置いているのです。結局、こうした仕組みによって、我々国民は公平な裁判を受けることができます。
【生徒】 憲法って司法権の独立について慎重なのですね。ただ、公の弾劾であれば罷免されると書かれています。それでも、司法権の独立はきちんと確保されていると言えるのでしょうか?
【弁護士】
確かに、今言ったように司法権の独立も大事だけど、裁判官自身が犯罪をするような人だったら、適切な裁判がなされないですよね。そのため、そうした場合に備えて、裁判官が罷免される余地も憲法は認めています。その一つが「公の裁判」ですが、これはいわゆる弾劾裁判のことで、それによって実際に罷免されたケースは10件を超えていないくらいだから、かなり厳格と言えます。そうすると、憲法は、司法権の独立を確保しつつ、同時に司法に対する国民のコントロールも図っているといえるでしょう。
【生徒】 なるほど。勉強になりました。