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国民の権利及び義務 第10条~第40条
第31条 法廷手続の保障

【弁護士】 憲法31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない」と定められています。
簡単に言うと、「法の適正な手続」(due process of law=デュー・プロセス・オブ・ロー)によって、人身の自由を保障することです。

【生徒】 法文では、手続が法律で定められていることを要求するにとどまっているように読めます。手続さえ法律で定めれば、国は国民の人身の自由を奪ってもいいのですか?

【弁護士】 「国民の人身の自由を奪っていいのですか?」と無邪気に尋ねられても困ります。
国が国民の人身の自由を奪うということは、強度な人権制約になります。動きたいときに動けない、働きたいときに働けない、家族と会いたいときに会えない…これらの悲しい状態はすべて身体が拘束されたことが原因です。このような状態を回避するために、31条が定められています。
31条は、手続を法律で定めることのみならず、一般的には、①手続が適正でなければならないこと、②実体もまた法律で定められなければならないこと(罪刑法定主義(ざいけいほうていしゅぎ))、③法律で定められた実体規定も適正でなければならないことを意味する、と言われています。

【生徒】 ①~③の中で一番重要なのはどれですか?

【弁護士】 ①の「手続が適正でなければならないこと」です。適正な手続には、「告知と聴聞」が必要です。つまり、国が国民に刑罰等を科す場合には、当事者にあらかじめその内容を知らせて(=告知)、当事者に弁解と防御の機会を与えなければならない(=聴聞)というものです。
例えば、刑事事件において、被告人に告知・聴聞の機会を与えなければならないことはもちろんのこと、被告人が所持していた物を没収する場合、没収した物の中に他人の物が入っていたならば、その他人に対しても告知・聴聞の機会を与えなければなりません。

【生徒】 そういえば、手続、手続と言っていますが、「法律の定める手続」や「法の適正な手続」でいうところの「手続」って、何の手続きですか?

【弁護士】 「手続」とは、31条の「その他の刑罰を科せられない」という言葉から、直接には刑事手続についての規定であるとされています。

【生徒】 先生が「直接には」ということは、別の読み方もできるということですか?

【弁護士】 そうです。
そもそも、(人権総論のところで学んだかも知れないけれど、)日本国憲法は、国と国民の間を規律する法であって、憲法は、国王が絶対的な権力を保持して国民を支配したという中世のような状況を避けるために、国から国民を守ります。
これを31条の関係でいうと、「国」とは、警察官・検察官といった捜査機関が主になります。もっとも、捜査機関だけではなく、行政の活動が積極的・活発的になっている現代社会では、行政機関も国民の権利を害する可能性が増えてきました。だから、31条との関係での「国」には、行政機関も含まれると解釈することもできます。

【生徒】 行政機関が、国民の権利を侵害するのですか?

【弁護士】 国民への権利侵害がありうるとされた例は、納税義務者に対して、収税担当の者が強制的に質問し、帳簿等の物件を検査する場合が挙げられます。

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