

【弁護士】 21条には言論・出版の自由も例示されています。「言論」は口頭による表現行為を、「出版」は印刷物によるものを指します。これらは皆さんでも容易に想像のつくものでしょう。では、営利的な目的でなされる、いわゆる営利広告も、21条の保障を受けると思いますか?
【生徒】 営利的広告は経済的活動の一部としてなされますよね?それだと憲法22条や29条で保障される経済的活動の自由のうちに含まれるような気がします。ただここまでの流れからすると、どんな表現も表現の自由の保障に含まれるとして、21条で保障されるようにも思います。難しいです。
【弁護士】 難しく感じたのは無理もないです。この話は憲法学上も見解の対立があるところだからです。差し当たり、21条で保障されるけれども、その経済的自由としての性質を有する点で通常とは異なるとだけ知っておいてください。
【生徒】 わかりました!ところでニュースなどでよく中国や韓国の方が国旗や首相の似顔絵を破壊したり燃やしたりする光景が流れていますが、あれも言論の自由に含まれるのですか?何も喋らずに、ただ燃やしているだけであれば「言論」とは言えないような気もします。それに燃やしたり破壊したりという暴力的な行動を憲法上保障して良いのかも疑問です。
【弁護士】 あなたが今挙げたような表現は、言語的媒体によらずに自己の意見や思想を象徴する行動によって表現活動を行っていることから「象徴的表現」と呼ばれています。確かに、この種の表現は、他者の権利等と衝突しやすく、また過激な形をとりやすいものですね。しかし、マスメディアを通じて表現する機会を持たず、言語的成熟さを欠き、あるいは時間的余裕を欠く者にとっては、殆ど唯一のないし最も手っとり早い表現方法であるということから、保障の必要があると考えられています。そこで「言論の自由」もしくは「その他一切の表現の自由」に含まれると考えられています。ただし、他者の権利などとの兼ね合いで調整がはかられることがあるのに変わりありません。危険で破壊的な集団行進を伴って象徴的表現がなされるような場合は規制の必要が大きく、また規制が許容されることも多いのです。国に抗議したいからといって、火炎瓶や爆竹を日本大使館に投げ込んだりすれば逮捕されてしまうのもこうした理屈なのです。