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地方自治 第92条~第95条
第94条 地方公共団体の権能

【生徒】 先生は、94条は団体自治についての規定って言ってましたよね。
確かに、地方公共団体に財産の管理や事務の処理など、いろんな権限があるので、地方自治は団体自らの意思と責任で行われるという感じがします。

【弁護士】 そうだね。団体自治とは自由主義的要素であるとも言われるからよかったら覚えておいて。

【生徒】 はい。先生、気になったところがあるんですけど、94条には「法律の範囲内で条例を制定することができる」とあります。法律の範囲を超えることは許されないんですか?法律って日本国内全ての法律を指すんですか?

【弁護士】 例えば、日本では銃の所持はいわゆる銃刀法というもので許された場合を除いて禁止されています。ところが、ある市が銃を自由に所持していいという条例を作ったらどうなると思いますか?

【生徒】 それはとても怖いですね。銃は危険だから、日本では禁止されているはずなのに、ある市だけ持っていいということになったら、その市だけ銃による事件や事故が起こる可能性があるし、私だったらそんな市には住みたくありません。

【弁護士】 何でもかんでも自由に条例が作れるとしたら、国政は実現したい政策の実現ができなくなりますし、日本を統治すること自体が難しくなってしまいますよね。
じゃあ、国が何も規定していないけど、ある市ではどうしても守らせたいことがあるとします。それを条例で定めることはどうですか?

【生徒】 私の市であったポイ捨て条例などですね。国がポイ捨ては禁止じゃないといっているのだとすれば、そのような条例は法律の範囲外とも言えそうだし、何も言っていないということは、禁止してもいいってことにもとれるし…難しいですね。

【弁護士】 いい線をいっていますね。このことについて判断した判例があります。いわゆる徳島市公安条例事件というもので、法律を勉強した人なら一度は聞いたことがあるという有名な判例です。

【生徒】 その判例では何て言っているんですか?

【弁護士】 大体あなたが言ったことと同じようなことを言っています。
条例が国の法令に違反するかどうかは、法令や条例の文言を対比するだけじゃなくて、それぞれの趣旨、目的、内容や効果を比較して、両者の間に矛盾や抵触があるかどうかで判断すべきとしています。
例えば、国の法令で明文の規定がない場合でも、法令が規制せず放置すべきだという趣旨なら、このことを規制する条例は国の法令に違反すると言っています。

【生徒】 へー。条例は国の法律のことも考えながら作らないといけないんですね。

【弁護士】 そうですね。また、憲法上「法律でこれを定める」としている規定がいくつかあるのですが、法律で定めると憲法が規定している事項を条例で定められるのかが争いになったこともあります。

【生徒】 法律と条例ってやっぱり別物なんですか?

【弁護士】 これが難しい点で、憲法84条の租税の規定では、法律で定めるといった文言がありますが、ここでいう法律には条例が含まれると解されています。地方公共団体には自治権の一つとして課税権があるため、課税権を行使できる以上、条例で課税についての規定ができることは当然だからですね。
これに対して、条例とは議会の議決を経て成立する点で法律に準じるものであるから、条例で定めても許されるという論理をとった判例もあります。

【生徒】 うーん、なんだかまた難しい話ですね…。

【弁護士】 そうですね。まぁ憲法に法律で定めると書いてあっても、条例で規定することが許される場合もあるという程度に理解しておけば問題ありません。
また、94条に関するその他のルールとして、条例は、その地方公共団体の治政のために作られるものですから、自治事務、つまりその地方公共団体の事務に関するものでないといけないという決まりもあります。

【生徒】 条例を作るにしても、たくさんのルールがあって大変ですね。

【弁護士】 そうなんです。実際に地方公共団体で条例を作る際には、事前にその分野の法律の専門家や弁護士に意見を聞くということも多いですからね。ただ、このような条例制定権があるおかげで、地方公共団体はその地域の特性を生かした県政や市政などが可能になるのです。

では、最後に憲法95条という少し変わった規定についてみておきましょう。

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